札幌新陽高等学校 第66回入学式 校長式辞
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。新入生のご家族や関係者の皆さまにも、心よりお祝い申し上げます。そして来賓の皆さま、ご列席くださりありがとうございます。
本日、第66回札幌新陽高等学校入学式を執り行い、302名の新入生を迎えられることを嬉しく思います。
これまで皆さんは中学生として、何度も新陽に足を運んできたかと思いますが、今日からここが皆さんの学び舎です。
あらためて、新陽へようこそ。皆さんが新陽高校を選び、今日ここに来てくれたことに心から感謝し、歓迎します。
本校の前身である札幌慈恵女子高等学校の第1回入学式が行われてから65年。その間、社会は大きく変わりました。一方、本校において変わらなかったものは校訓「自主創造 自ら道を拓く」の精神です。
この建学の精神に基づき、新陽が目指すビジョンが「人物多様性」。多様性という言葉の意味は「互いに異なる人や物の集まり」です。そのままだと、ただ違うものがある状態を指します。
新陽のビジョン「人物多様性」が目指しているのはその先です。それぞれ異なる個性を認め合ってお互いが安心して過ごせること、そして、個性を活かし合ってお互いを補ったり新しいアイデアを生み出したりすること、それが皆さんと共に創りたい学校です。ぜひ自分の個性を発揮して、新陽の多様性に彩りを加えてください。
今、私たちはさらに大きな社会の変化の中にいます。新陽生には、変化に対応する力を身につけるとともに、前に向かって自ら変化を起こす人になってほしいと思います。
そのために大切なのは、自分で考え行動し、その行動を振り返ること。この繰り返しによって、人は成長し、自分の道を拓くことができます。どうやって考えるか、どんな行動をとることができるか、どう振り返ったらいいか、それをこれから一緒に学んでいきましょう。
さて、自分で考えて決断し行動することができる状態を自立と言いますが、自立は、自分でなんでもできるようになることではありません。たった一人で生きる孤立とも違います。
「自立とは、依存先を増やすこと。」
そのように言っている方がいます。小児科医の熊谷晋一郎(くまがやしんいちろう)さんです。
熊谷さんは、生まれた時の呼吸トラブルの後遺症で脳性麻痺となり、ずっと車椅子生活を送っています。熊谷さんによれば、「障害者とはいろいろなものに頼らないと生きていけない人と思われているが、本当は依存先が限られてしまっている人たち」のこと。
「逆に依存先を多く持っていて、一つひとつへの依存度を浅くすると、何にも依存してないかのように錯覚する。つまり、自立しているとは、何にも頼らない状態のようで実はたくさんのものに依存していること」と熊谷さんは仰っています。
熊谷さんは、東日本大震災のとき、職場である5階の研究室から逃げ遅れてしまいました。なぜかというと、エレベーターが止まってしまったからです。逃げるということを可能にする依存先が、車椅子の熊谷さんにはエレベーターしかなかったのです。他の人は、エレベーターが止まっても階段やはしごで逃げるという選択肢がありました。5階から逃げるという行為に対して複数の依存先があるということです。
熊谷さんのおっしゃっている「依存先を増やす」とは、社会におけるシステムの話ですが、このお話を伺った時、これは人にも言えるのではないか、と思いました。
実はみんな、たくさんのものや人に依存して生きています。私もそうです。困ったら助けて、と言っていいし頼っていい。誰かに頼られることもある。大人になる、自立する、とは、頼る先を増やしていくこととも言えるのではないかと思います。
皆さんは、本校のアドミッション・ポリシーに基づき選ばれた302名です。
日々を大切に、冒険したい。
失敗を恐れず、挑戦したい。
好奇心を大切に、学び続けたい。
そう思って新陽生になることを決めたと思います。だからこれからは、その意欲をもって一歩踏み出してみてください。そしてその時、自分が一人ではないことを覚えていてください。新陽には、共に挑戦する仲間がいて、相談できる先輩がいて、背中を押してくれる先生や大人たちもいます。
その人たちを頼り、頼られ、助け合いながら、自分の足で一歩一歩進んでいってもらいたい、そう願っています。
あらためて、入学おめでとうございます。さいごに教職員を代表し、新陽が皆さんの母校となる日まで全力でサポートすることをお約束して、私の式辞といたします。
2023年4月10日
札幌新陽高等学校長 赤司展子