新入生の皆さん、入学おめでとうございます。

新入生のご家族や関係者の皆さまにも心よりお祝い申し上げます。そして来賓の皆さま、ご列席くださりありがとうございます。

1958年4月13日、本校の前身である札幌慈恵女子高等学校の第1回入学式が行われ、それから66年の歴史を振り返ってみると、社会も本校も大きく変わりました。

一方、変わらずありつづけたのは校訓「自主創造 この道は自ら拓くべし」の精神です。そしてこの精神に基づき、新陽が掲げているビジョン「人物多様性」が目指すのは、一人ひとりが互いを尊重し、個性や得意分野を活かし合い、新しい価値を創造する社会です。

さて「互いを尊重する」とはどういうことでしょう。

まず思い浮かぶのが、他者を尊重すること。相手の気持ちを理解しようと共感を持って接し自分と異なる意見や価値観を受け入れること。同調したり迎合したりするのとは違います。自分と違う意見に対して「それは違う」と拒絶するのではなく、「そういう考え方もあるんだな」とまずは受け止めることが、他者尊重の第一歩です。

そして、互いを尊重するには「自分を尊重する」ことも大切です。ありのままの自分を受け入れ、自分自身を大切にすること。自分を高く評価しすぎるのでも低く見積もるのでもなく、自分という存在はそれだけで価値があると思うこと。それが自己尊重です。

この「自分も他者も大切にする」ことこそが互いを尊重することであり、自分と相手の両方の可能性を引き出し、それぞれが個性や強みを発揮できれば、変化を起こして新しい価値を生み出していけるはずです。

これに似たことを表しているようで興味深いと思った表現があるので、紹介したいと思います。それは、エッセイストの松浦弥太郎さんが書かれた「ほんとうの味方のつくりかた」という本の中にあります。新陽の図書館にもあるので、興味を持った人はぜひ借りてみてください。

この本の中で弥太郎さんは、本気で頑張る人に必要なもの、あるいは、成功している人や前に進んでいるように見える人が持っているもの、それは「味方」だと言っています。そして「外側の味方」と「内側の味方」があると。

味方というと、自分の周りにいて自分の味方になってくれる人がイメージしやすいと思います。これを「外側の味方」と呼びます。誰も一人では生きていけないので、力になってくれる人や寄り添ってくれる人、共に喜んだり悲しんだりしてくれる人が必要です。

でも、味方は人間関係だけとは限らない、というのが弥太郎さんの意見です。性格や習慣、ものの考え方などあなたの内面にあるものすべてが、人生のあらゆる局面であなたを助け、頼りになる「味方」として力を貸してくれます。それが「内側の味方」です。

内側は意識しないと見えないのですが、それはつまり、心がけ次第で自分が持っているものを最高の味方にすることができるし、意識的に自分の味方になるものを身につけることもできる、ということでもあります。さらに「内側の味方」は、人間関係という「外側の味方」からの応援を増やすのにも役立ちます。

新陽生となった皆さんには、内側と外側の両方の味方を得ることを意識して毎日を過ごしてもらえたら、と思います。

そのための環境は私たちが用意します。例えば、一人ひとりが自分を知るためのリフレクション(振り返り)を行う機会が、新陽には頻繁にあります。

また、皆さんにはすでに67期生として共に入学した240名の仲間がいます。さらに、”ハウス”や授業のクラスなど生徒が複数のコミュニティに属し異なる年次とも関わる場が設定されていたり、外部から来る魅力的な大人との出会いもあったりします。

ですが、これらの環境を活かすのは皆さん自身です。ですから、

日々を大切に、どんどん冒険してください。
失敗を恐れず、たくさん挑戦してください。
好奇心を大切に、貪欲に学んでください。

冒頭、本校が設立されてから66年、社会は大きく変わった、と言いました。今、私たちはさらに大きな社会の変化の中にいますが、新陽生には、変化に対応する力を身につけるだけでなく、自ら行動し変化を起こして、より良い明日を創る人になってくれることを願っています。

本日は、まことにおめでとうございます。
教職員を代表して、皆さんを心から歓迎し、これから歩む道を全力でサポートすることをお約束して、私の式辞といたします。

2024年4月6日
札幌新陽高等学校長 赤司展子